【書籍】NOSIGHNER「デザインと革新」

ソーシャルイノベーションデザイナーという肩書きの太刀川さん。ニュートラルに物事を観察して、社会に変革を起こせるようなデザインを!目に見えていない価値をビジュアル化するというミッションを掲げて活動をしていらっしゃるデザイナーさんです。

 

分解すれば理解出来る

「分からないことに出会ったら、まずは要素を分解して、抜かした段階はなかったか、順を追って理解しようとしてみてください。」

 

例えば、スケッチが上手くなるコツも、各プロセスを分解して、各工程のスケッチ段階という要素を1つ1つ体得していくことで、表現力が少しずつ向上していきます。モデリングについても、物作りに関しても同じです。各プロセスの基本ベースを1つ1つクリアにして、小さな問題を解決していくことで、大きな問題も解決していけるはずです。めちゃくちゃうまい絵一つでも、こんなに描けて羨ましいなぁ。自分にはできないなぁとすぐに諦めてしまうのではなくて、そのプロセスを解体してみてみると、以外と基本に忠実だったりします。スケッチの話に戻ると、モノトーンとハイライト、映り込みなどの表現技法一つ一つが組み合わさって、リアルな絵が出来上がっていたりします。完成された絵だけをみているとわからないですが、具体的にスケッチが上手いなぁという人の描き方のプロセスを追ってみると、どんな基本をベースにしているかがわかるようになります。順を追って描いていけば、結構簡単に描けるものです。やはり分解、解体から始まります。

 

 

 

 

センスとは才能ではない プリンシパルだ

「ノイズの中で安易な選択に流されず、定めたプリンシパルを徹底する美意識」

 

僕の考えと多少差はありますが、共感。「ノイズの中」というのは、いろいろやりたい、あの人みたいに、あの人も良い、みたいな誘惑ですね。ロールモデル(目標)となる自分のイメージを鮮明化させられるかどうか。なかなか鮮明化までは行きませんが、自分が価値があると考えている分野やキーワード、思考エッセンスなどは誰にも左右されない揺るぎないプリンシパルとして大事に持っておく必要があります。物事や仕事に対する考え方、コミュニケーションのあり方、デザインの大切にしているプロセスなど。それら1つ1つを磨いていけば、それが自分にしかないセンス=特異分野になってくるんだろうと思います。最初は誰かの思考を追っていくわけですが、それはあくまで自分としては仮説であって、自分の考え方ではなくて、実践を通してその仮説を検証していく必要があります。このブログではしばらく、仮説検証を繰り返しています。自分の血となり肉となった言葉とイメージが最も大切なプリンシパルになると考えています。誰にも左右されない、自分の経験から来る言葉を最も大切にしていきましょう。

 

 

 

 

定義を言葉に凝縮する

「自分にとってのデザインの定義」

 

この項の内容は僕にとっても大切にしたい内容が書かれていました。デザインって何なの?と常に考えているわけですが、それを言語化するかしないでデザイナーとしての自己成長率も変わってくると考えています。だから僕の場合はブログで言葉とイメージをセットにして、抽象的な概念を具体化してみたり、サイン化してみたり、図解したりしながら、構造的に理解しようとしているのかもしれません。今の自分が考えるデザインってどういう事なのか、それがわかるまでは。

 

 

 

違和感に敏感に正直になる

「「まぁこれくらいでいいかな」というアイデアが、本当に良かった試しはありません」

 

違和感を意識してみて行くと、業務改善アイデアに繋がったり、提案アイデアが果たして本当に良いアイデアといえるのか精査をする時に役に立ちます。日常で感じる違和感や、お店に入って感じた接客や対応の違和感などは、個人差はあると思いますが、みなさんお持ちではないでしょうか。その微妙な違和感に気づいて、キャッチして、深堀をして行くことで、新たな価値を生むサービスやデザインを提案していくのが、プランナーであったり、デザイナーの役割だと思います。

 

僕の場合は違和感を感じたら即メモを取っておき、後から内省を繰り返したり、違和感はそもそもどこから来ているのか分析したりすることが好きです。男性視点で感じる違和感、女性視点、独身、既婚者、年齢、職種などでも、感じる違和感は千差万別だと思います。また、誰もが感じる違和感、ごく少数の人が感じる違和感もあります。芸術家が感じる違和感は、後者にあたります。

 

提案デザインの違和感をキャッチする為に僕がやることは、すぐ隣にいるデザイナーに見てもらうことです。初見でパッと見たときの感想を聞く。そうすると自分の中ではしっくり来ていても、他の人の意見をヒアリングすることで、気づいていなかった違和感に気づく事ができます。その違和感の原因を探り、改善していくと、パッと見たときの印象というのは随分変わって来ます。

 

また、デザインを検討する上で1つの指標にしていることがあります。

 

その日に良いと思っていたアイデアについて、次の日に見て見ても良いアイデアと思えるか、良いデザインと思えるかどうか?

 

人間集中して1つの課題に取り組んでいくと、自然と自分のアイデアやデザインを正当化しようとして、脳が自動的に「このデザインは良いデザインだ!」という方向へ調整をかけていくような気がしています。果たして本当に良いかどうか、冷静な目でじっくり見てみる時間も必要だと考えています。気付く眼が大切ですね。

 

 

 

 

自分が欲しいものをつくる

「妥協せず、自分が欲しいものになるまで磨き続けることができれば、リサーチに頼った判断よりずっと正確な答えが出てきます。なぜなら、僕らは僕らが思うよりもずっと似ているから。」

 

まず「妥協せず」というところが最も難易度が高いと思いますが、まぁ、これでいいだろうという判断ではなくて、経験上ですが、とことんまで納得できるところまで練り上げた提案物は、割とすんなり通る事が多いと思います。

 

他社はモックを作っているぞ!紙面だけで大丈夫か?とか他の動向を意識し過ぎて、体裁を無理やり合わせようとすればするほど、上手くいかない事が多いです。だから、僕もリサーチは、必要最小限で良いと考えています。提案アイデアに類似したものがないかどうかをリサーチする程度かと思います。リサーチに時間を取られて、アイデアを考えたり、デザインを考えたりする時間が削られてしまうようならいっそのことリサーチしない方が良い。

 

それよりも拘りを深く掘り下げて、これ本当に素晴らしいアイデアで、世の中に出たら本当に良いと思いませんか⁉︎と自信を持って説明出来る方がよっぽど説得力があります。その為に細部に拘る。造形美に拘る。納得いくまでとことん。誰もみていなかったとしても、拘りたいポイントは崩さない。そんな主観的な思い込みに熱があれば、その熱は伝染していきます。動いてくれなかったあの人もひょっとすると熱っぽく語れば動いてくれるかもしれません。

 

 

 

 

「自分と作品との距離を適切に離し、客体化する」

 

冷静になってみつめる眼を持っているかいないかが、プロとアマの違いでしょうか。僕の経験上ですが、熱い目と冷たい目の両方の目で自分の作品を見てみる、つまり、主観と客観の両方の行き来を繰り返していくことで作品は洗練化されていきます。熱い時はとことん熱くなって燃焼しきる。一方、一旦熱くなった頭をキンキンに冷ましてから、冷静に見て見る。冷たい目で違和感に気付いたら、そこは正直に治して、また熱くなる。

 

このヒート&クールをサイクル化していくことで初めて、洗練されたアイデアやデザインが産まれてきます。尊敬するあの人にみてもらったらどう思われるだろうか?パートナーだったら?子供達だったら?と視点を切り替えていくことで、自分というものから脱して、客観的に評価が出来るようになってきます。ブレストでは批判厳禁で、とよくルール化されたりしていますが、僕はそのやり方はある側面から考えれば、間違っていると考えています。ある側面というのはアイディアを収束=絞り込んで、統合化していく段階では、ということです。批判や否定がないアイデアやデザインのみが残れば、それは無難なアイデアであったり、デザインに終息します。

 

批判や否定があれば良いデザインかというとそうでもないですが、圧倒的なデザインであれば、誰も文句のつけようがないくらいレベルの高い次元に行っているので、それはそれでありですが。そんなアイデアやデザインを毎回アウトプットするのはなかなか難しいと思います。批判厳禁のブレストで、違和感が残っていても言わずにスルーして賞賛することは自分に嘘をついていることになりますし、提案者に対しても失礼だと思います。思ったことを正直に言い合えない、空気を読んでブレストする会議で、革新的なアイデアが出るわけがありません。みんなの合意形成を取ったアイデアが果たして革新性があるでしょうか。否です。