オープンプロジェクトとクローズドプロジェクト

■今までの企業の特徴
製造業では、プロジェクトのほとんどが非公開のクローズドプロジェクトだと思います。競合他社にアイデアやデザイン、機構や技術情報などを漏らさずに、自社で権利を独占できるようにしのぎを削る完全非公開で進むプロジェクトが今までは大半でした。自社の利益を最優先にして、他社と差別化を図る意図がありました。そのようにして、企業は資本主義の中では存続をしてきました。価値は全てお金になるわけです。お金を得るために人を時間で雇い、利益を上げられる事業だけを残して、利益が上がらない事業は撤退する。キャッシュフローが回るか回らないかで全てが判断される。結構シビアな世界です。その為業務をとことんまで効率化して、分業制にして、無駄を省く。スキマというものを排除してきたのが現在の企業でしょう。

■横断的でオープンな繋がりが加速中
そんな中、21世紀に入ってからオープンでモノゴトを作ろうという動きが加速しつつあります。クラウドファウンディングによる資金調達プラットフォームが確立し、Kickstarterを皮切りに、国内ではwemakeやtrinusなどのオープンコミュニティを活用したアイデア創発とデザイン開発、物作り開発から製造販売までを一貫して行えるようなプラットフォームが出来上がりつつあります。お互いの得意分野を縦割りではなく横断的にマッチさせていく仕組みが様々な分野で花開きつつあります。最近では大手メーカー同士が、縦割りの企業の閉塞感を打開する為に、融資を募って、横断的な情報交換やコラボレーションを進めようという動きも活発化してきています。富士ゼロックスの大川陽介氏もその一人ですね。先日NHKBS1の経済フロントラインにも出演されていました。わるだ組をコソッと立ち上げて、共感してくれる人たちを巻き込んで、大きな輪にしていく原動力には敬服します。月に一回アイデア会議をしていたというのも面白い取り組みだと感じました。サークルや部活のようにやりたい人達だけが集まって、面白いこと、楽しいと思うことを考える。こういう取り組みをしている企業は本業でも強いんじゃないかと思います。効率化一辺倒ではない。共感によってプロジェクトが動いていく経験をしている人がいる企業はこれからの時代には強いと思います。


■オープンかクローズドか?
では、オープンとクローズ、一体どちらが良いのでしょうか?オープンに進めたいプロジェクト、クローズドで進めたいプロジェクト。その間を行ったり来たりするプロジェクト。いろいろあると思いますが、一概にどちらか一方が良いということは無いのかなぁとも感じています。僕は両方、時と場合によって使い分けながら、プロジェクトを進めていくのが良いのではないかと考えます。オープンにしてアイデアを広く募り、共感する人が多いアイデアは、共感指数が高く人が集まりやすい。また当事者の問題を支援者やNPOなどのソリューションによって解決するようなマッチングサイトも今後たくさん出てくるのでは無いかと考えています。ニッチで普通の人は問題としていないから、スケールしないけど、ピンポイントで解決するような、マッチングシステムがあれば、この世の中を生きづらい人たちは、より生きやすく、楽しく生活が出来て、伸び伸びと働けて、多様な価値観を認め合える社会になるのではないでしょうか。

■公開・限定の範囲:提供価値の密度
このようにオープンにするにしても、その囲いをどこまでにするかで情報の密度もリサーチの信頼性も変わってきます。公開範囲をどの範囲まで限定して行くのかによって、コミュニティに集まる人のマッチ度や、提供する情報やアイデアなどの価値も変わってきます。母体ベースがどこまでのレベルであり、範囲なのかを考えながら、オープンプロジェクトもクローズドプロジェクトも進める必要があるかと思います。

■イノベーションの意味
そもそもイノベーションという意味は革新です。革をピーンと張った状態を切り裂くという意味があります。企業はつま先で立っている状態です。いつ転んでしまってもおかしくない中、必死に立って、なんとか毎日を凌いでいるようなイメージを持っています。革を張った状態となると、常に緊張感のある状態ですが、そこにナナメに切り裂く鋭い刃が入るとそれがイノベーションということです。これは残酷なように見えますが、何かを犠牲にしてでも、やらなければいけない時があるんだという覚悟にも似ています。

参考サイト


そうやって道を切り開いて来た歴史も振り返りながら、今のこの時代に自分は何で勝負していくのか、よくよく考えてみました。生きている時間なんて本当に一瞬で過ぎ去ってしまいます。今この瞬間の時間に何をするかで未来も変わります。一瞬一瞬を大切にしつつ、長期的にどうなりたいかというライフデザインも視野に入れて、これからどうしていくのが良く良く考えてみようと思う次第です。

みなさんはこの瞬間にどんなことに価値を見出し、どんなことに力を入れて行きたいですか?