KK塾2016 松岡正剛氏の仕事

デザインディレクター川崎和男氏主催のKK塾第7回目を受講して参りました。
編集工学を提唱する松岡正剛氏をゲストに迎え、松岡氏の仕事への取り組みの仕方、川崎和男氏とのデザイン談義を聴講致しました。
◆日時:2013年12月20日(金) 14:00~17:00
◆場所:五反田DNPビル1Fホール
以下、共感・印象に残った部分を掻い摘んで紹介
編集工学を提唱する松岡正剛氏。
編集工学とは、あらゆる情報を工学的な手法で編集することであり、イメージをマネージすることであり、編集は照合であり、連想であり、創発を生む武器になるものである。松岡氏はネット上の編集稽古によって、情報編集力を鍛えていくISIS編集学校の創始者でもある。今回のセミナーで印象に残った言葉を以下列挙する。
・雑誌【遊】は誰も見たこともない雑誌を作ってみたいという想いから創刊した。
・知とはまたぐものであり、インタースコアするものである。
・日本は【方法】の国だ。
・ここ最近は様々なことが編集を終えようとしている。私はそれに抵抗している。コンビニ・スーパー・Facebook・大学受験など。全てがスコア化され、評価ではなく評判で決まる世界。それが危ないと考えている。本質的な評価とは何か今一度再考する必要がある。
・ゼロから何かを始めるなんでことはあり得ない。何かを引っ張り出して来て、編集する。アートであっても小説であっても、デザインであっても。
・創造・創発など「創」という字には、蔵に傷を付けるという意味がある。何かを創り出すというということは対象を傷付けていくという根本的な意味がある。
・革新の「革」の字にはピーンと張った皮に刃物を入れるという意味がある。
・流行のデザイン思考はIDEOの商品である。デザイン思考ではイノベーションは起きない。思考という漢字の意味を再考する必要がある。
・イノベーション=新結合という意味がある。現在のビジネスモデルというのはfor They(三人称)。しかし革新的なモノはfor me(一人称)からの発想が不可欠。次にFor you。最後にtheyとなる。
・学術と芸術はどちらが先か、どちらが上かという優劣を付けたがるがそんなことは無い。二つで一つの概念。【文系・理系】【直感・論理】【Art&science】も同様。
・松丸本舗は書店を再編集した実験場だった。書棚というものを一から再構築。普通の本棚ではない。
・世界を繋げたものが本である。本はインタラクティブメディアである。
・見えないインタラクティブを可視化することが編集工学だ。
・「情報の歴史」では世界にない年表を作った。世界の分かりにくいものを可視化した。
・情報は動く。
川崎氏と松岡氏のセミナーはあらゆる分野にイメージと言葉が飛んでいく。一見脈絡も無いような話題が飛び交っているように感じることもある。始めて受講した人が、「あの松岡って人ボソボソ喋っててて、話が飛びすぎてよく分からなかった」なんてことを言っていたが、両氏にとって分野なんて関係ないのだと思う。あらゆる領域は統合化されて融合して結合する。あらゆる分野の情報や方法を編集し直しているのが松岡正剛氏。編集というのは常日頃から誰もが行っていることで、昨日の出来事を3つ思い浮かべてみて。と言われ、考えを巡らせれば、そこで編集が行われている。私たちの仕事も編集することで成り立つ仕事である。しかし、普通の編集と編集工学の決定的な違いは、意識的に編集をしているかどうかである。「イメージをマネージする」ということを松岡氏は言っていたが、まさしくイメージの行く先を自分でコントロールして、マネジメントすることが、アイディアを発想する時に不可欠な技能だと考える。そのマネージする技法が【編集工学】には詰まっている。私は2014年3月にこの編集工学の勉強会を企画デザイナー向けに開催したこともあるが、松岡正剛氏の編集工学的手法は、あらゆる仕事に必要な技能だと考えている